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東京高等裁判所 昭和28年(ラ)380号 決定 1954年2月17日

抗告人 岡田実

訴訟代理人 望月三男也

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、別紙記載のとおりであつて、当裁判所はこれに対し、次のように判断する。

一、競売の目的たる不動産が数箇ある場合、これを各別に競売するか、またはこれを一括して競売に附するかは、別に法律上の売却条件をなすものではないから、裁判所がその意見によつて自由に決定することができ、また一旦そのいずれかによることを決定した場合においても、爾後裁判所が適当と認めるときは、あえて利害関係人の合意を要せず、これを変更することができるものと解せられるから、原裁判所が、その方法を所論のように変更したとしても、これを以つて、民事訴訟法第六百七十二条第三号に該当するものということはできない。

二、競売手続の利害関係人に対し競売期日の通知をなす場合、右の通知と競売期日との間には必ずしも所論のように、十四日の期間を存しなければならないものではない。けだし競売法上かかることを定めた規定は全然なく、また不特定の一般人に対して競売に関する主要事項を周知させ、できるだけ多くの人を競売に参加させることを目的とする競売期日の公告と、特定の利害関係人に対し競売期日を知らせる通知とは、おのずからその性質を異にし、前者について競売期日との間に少くとも十四日の期間が存しなければならないとしても、後者について当然に同様の期間が存することを要するものとは解されないからである。

以上抗告理由はいずれも、その理由がないから、本件抗告はこれを棄却すべきものと認め、主文のように決定した。

(裁判長判事 小堀保 判事 原増司 判事 高井常太郎)

抗告の理由

一、抗告人は、本件競売事件の債務者、所有者であつて、競売の許否についての決定により、損失を被ることある利害関係人である。

二、原裁判所は競売物件を一括して競売し、競落を許可したが昭和二十六年九月五日になした第一回の競売公告に於ては、個々に競売すべきことを命じ、その後昭和二十六年九月十五日債権者から一括競売の申立あるや、利害関係人の合意なくして、爾後の競売は一括して競売すべきことを命じた。右は利害関係人の合意なくしてなした競売条件の変更であつて民事訴訟法第六百七十二条第三号、同法第六百八十一条により違法な手続によつてなされた競落に対する競落許可の決定である。

三、原裁判所は抗告人に対し、競売期日(昭和二十八年十月十二日)競落期日(同月十六日)の通知を昭和二十八年十月三日に送達した。競売法第二十七条は、競売期日ならびに競落期日は公告する外利害関係人に通知することを要件としている。競売法第三十条によつて準用される民事訴訟法第六百五十九条によると、競売期日は公告の日から少なくとも十四日の後たることを規定していて、通知の際の予告期間は規定していないが、右は民事訴訟法が通知を要件としないことを理由とするもので競売法に基く競売の場合は、公告と同様通知に際しても十四日の期間を置かなければならないと解すべきものと信ずる。けだし、裁判所ならびに市町村の掲示板を利害関係人が常に注意することは困難であつて、通知によつて競売の事実を確知することが通常である。従つて、公告の際の予告期通は通知にも適用されるべきである。しかるに、原裁判所が抗告人になした昭和二十八年十月十二日の競売期日の通知は十四日の期間がないから原決定は違法な手続によつてなされた競落を許可したことになる。

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